SSブログ

「続けている山行」 [山岳部]

(数年前に、卒業した大学の同窓会誌に載せた文章です)

 学生時代は山岳部所属。登る山は自分で選ぶと昔は思っていたが、最近は山が人を選ぶのだとつくづく思うようになった。かつて山岳部時代に挑んだ積雪期の飯豊・朝日の山々はもう僕を選んではくれないだろうし、最近は夏の飯豊もあやしいかとちょっと心配もしている。
 そんな中、学生時代より欠かさず続けている山行がある。5月連休の鳥海山の山スキーだ。北面の祓川よりスキーにシールを付けて登る。晴れていれば登り口から山頂が見えるし体力勝負だけの山だ。3時間ひたすら雪面を登り詰めて絶景の頂上にいたる。そこから遠く男鹿半島まで続く海岸線を見ながらスキーで降る。休まず滑れば20分で登り口まで降りてしまうが、勿論そんなことはしない。苦労の果実を味わいながら、なめるようにのんびり滑ってくる(年々低下するスキー技術もその一因だが)。ひとたび悪天になればこうはいかない。目標物がなく真っ白な雪原が広がっているだけなので、極端にルートファインディングが難しい山になる。だからどんなに晴天の時でも、天候急変時にそなえてビバークできる装備はかならずもっていく。
 ここ数年ご無沙汰気味だが、やはり5月連休時の南八甲田も素晴らしい。ロープウエイを使って一気に稜線に出てしまう北八甲田も最後に豪快な滑りができて楽しいのだが、機動力がつかえない分登る人の少ない南八甲田では静寂のスキーツーリングが楽しめる。南八甲田連峰主峰・櫛が峰の頂上は、北を向けば北八甲田連峰と陸奥湾を、南に目を転ずれば十和田湖を望める絶好の場所だが他の山スキーヤーにあうことの方が珍しかった。

 最近の愉しみは、ホームページ(HP)を作ることだ。山岳部時代の思い出の山行や最近の山の写真、それに折々の出来事や近況をつづったささやかなHPだが、卒後何年も会っていない遠方の友人宛の年賀状の片隅に、メールのアドレス(メルアド)以外にチョコチョコっとHPのアドレスも書き加えると忘れた頃に「ホームページみたよ」とメールが来る。多分、普通のメルアドだけではこうはいかないだろう。いってみれば手軽に作れる「個人同窓会誌」みたいなものなので、皆様にも是非HP開設をお勧めしたい。
 山岳部時代の写真には勿論懐かしさを感じるが、感慨はそれだけではない。かつて山行を共にした身近な先輩方の中の5人の方は、もうこの世の人ではないのだ。学生時代の夭折、不慮の事故、医師として脂ののりきった時期の突然の訃報…。厳しいが充実した山行を終えたあとの写真の中の笑顔にその後の彼らの栄光と人生の暗転を重ね、運命の無情さを思う。

 たとえば南八甲田の誰もいない稜線を一人でスキーで登っていると、かつての山岳部時代の山登りの時の感覚がありありとリアルな実感をもって甦ってくる瞬間がある。そんな時、「永遠の中の一瞬」という言葉を思い出す。うまく言えないが、その瞬間はかつての学生時代の山登りの「瞬間」と深いところで繋がっているように僕には思えるからだ。そういう山行をこれからもできるだけ(モチロン体力と相談の上だが)続けていきたいと思っている。

ch11-b.jpg

(南八甲田連峰、主峰・櫛が峯)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

ブログ始めました茂庭は秋 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。